カテゴリ:kuroの試写室( 5 )

アントワーヌ・ドワネルの冒険(その3)ー 夜霧の恋人たち ーBaisers voles


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兵役を終えた(というか、放り出された)アントワーヌは、再びサクレ・クール寺院の見える、自分のちいさなアパルトマンに帰ってくる。
真っ先に、ガール・フレンドのクリステイーヌの家へと向かうアントワーヌ。クリステイーヌはあいにく留守だったけど、相変わらずガールフレンドの両親にもてもてのアントワーヌは、まあまあゆっくりしていきなさいと引き止められて食卓へ。ちょうどよく彼らの知り合いを通じて、ホテルの夜勤の仕事を紹介してもらった。

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夜勤中にクリステイーヌが会いにやって来る。明らかに、アントワーヌのことが気になるみたい?でも彼女なら、絶対理想の女の子!
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 ホテルで仕事中(!)の探偵に、よかったら自分のところで働いてみないかね?と誘われたアントワーヌは早速転職! でもこの仕事、本当に向いてるの..?

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木の陰に隠れてるのがアントワーヌ。でもこれが慣れないとなかなか難しい。もうマダムにはバレバレ!!お巡りさんに通報されちゃう。
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ある男を追跡中、通りで、バッタリ初恋のコレットに遭遇!!なんと、夫は昔の恋敵アルベール。
「今度、デイナーにいらっしゃいよ」と軽く誘われたけど、平穏でいられないアントワーヌ。またもや追跡に失敗!!
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 探偵の次は、大手の靴屋の店員にまたもや転職。!でも、オーナーの奥さんはとびきり魅力的....!なにかが起こりそうな予感。
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 自分が恋に落ちてしまったことを隠せないアントワーヌ。同僚に、夫人を賛美する言葉をべらべらしゃべりまくる。
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 ブルジョワの奥さんであるタバ夫人はエッフェル塔(後ろ!)の見えるアパルトマンで退屈していた。従業員たちの噂話で、アントワーヌが自分に好意を抱いていることを知った彼女はアントワーヌにシックなネクタイを贈る。
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 ある朝突然アントワーヌを訪ねる夫人。アントワーヌはまだベッドのなかだった。部屋には、クリステイーヌの写真が飾ってある。夫人はアントワーヌにあとくされのない、一回きりの不倫を提案する。
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  でも、本命はやっぱりクリステイーヌ。というか、クリステイーヌのほうがアントワーヌに執心している様子。両親がバカンスに出かけたのをみはからって、いよいよアタック開始。わざとテレビの部品をはずして壊れたように見せかけ、靴屋を辞めたあと電気修理工になったアントワーヌを家に来させる。クリステイーヌの作戦は見事成功。ふたりは幸せに朝を迎える(彼女は彼に、いかにラスクを破損させずにバターを塗るかのテクニックを伝授する)。 そしてアントワーヌは......,
ついに彼女に求婚する! めでたし、めでたし。
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by kuro_music | 2014-12-22 00:40 | kuroの試写室

アントワーヌ・ドワネルの冒険(その2)- 20歳の恋 - Antoine et Colette (仏題)


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 さてさて、腕白小僧だったアントワーヌも、もう青春の真っ只中。
とっても気になる女の子がいる。その名はコレット。クラシックのコンサート会場で一目見て恋に落ちたのだ。
1962年に撮られたこの作品は、短編で29分しかない。だからよく、他の映画とカップリングで売られていたのを思い出す。私が昔持っていたビデオにも、これともうひとつ何か別のフランス映画が入っていた。短いとはいえ、これはアントワーヌシリーズのれっきとした2作目で アントワーヌのその後のキャラクターを理解する上で欠かせないエピソードが語られている。


自立したくてたまらなかったアントワーヌは、ちいさな仕事を見つけ、小さいけれど人生で最初の自分の城を見つける!それがこのアパルトマン。
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 目覚まし時計のネジとラジオのつまみをひもで結び付けて作った、オリジナルの目覚まし時計で目を覚ますシーン。目覚ましが鳴ると、ネジが回転しラジオがオンになるしくみ。目覚ましラジオの存在しない時代は、個々がもっと知恵を絞ってくらしてたんですねえ.....。アントワーヌの一日は、昨日の吸い殻に再び火をつけ、バッハのレコードに針を落とすところからスタートします。

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 映画館でコレットに迫るアントワーヌ。おもいきり退けられたアントワーヌはショックで即、退場。
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 大好きなコレットの家族の住む家の真向かいに引越しをして以来、アントワーヌはもう彼らの家族の一部。ごはんだって食べに行っちゃう。
コレットの両親にはとても歓迎されているアントワーヌだけれど、肝心のコレットはいつまでたっても脈なし。そしてこの日コレットは、夕食後に迎えに来たアルベールと共に、アントワーヌをおいてきぼりにして出かけてしまう。
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    ちょっと、可愛そうなラストです。でも、これが青春!

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by kuro_music | 2014-12-19 07:51 | kuroの試写室

アントワーヌ・ドワネルの冒険(その1) ー 大人はわかってくれない - 400 cents coups (仏題)


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フランソワ・トリュフォーは、私がこのブログのタイトルにした”アントワーヌ・ドワネル”という魅力的なパリジャンをこの世に送り出した、フランスの映画監督。
このアントワーヌを主人公として、1959年から20年にわたって5部作が制作され、いずれの作品においてもジャン・ピエール・レオーという、同じ俳優がアントワーヌを演じた。

        
     60年代はじめの頃のジャン・ピエール・レオー。
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主人公アントワーヌは、トリュフォーの分身とも言われ、監督の自伝的な作品でもある。
これらの連作は「アントワーヌの冒険」とよばれ、トリュフォーの作品郡のなかでも最も重要な位置を占める。どの作品も独特の味わいがあり、観るたびに新しい発見がある。もう一度、そのひとつひとつの映画の魅力をふりかえってみよう。


これは1959年日本公開の時のポスター。いい味でてる!

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連作の最初の作品である「大人はわかってくれない」は、1959年に14歳のジャン・ピエール・レオを起用して撮影された(白黒)。この映画の、ジャン・ピエール・レオーのあどけなさと、すでに大人顔負けなまでに個性の備わった演技には脱帽!
早熟で、読書好きで、夢見る自由人アントワーヌのものがたりはここから始まるわけだ。
この作品で語られるのは、アントワーヌの子供時代。といっても、決して「子供向けに」作られた作品ではない。厳格なくせに甲斐性のない父親、子供への愛はあるのに男との情事に走る母親、制約の多い学校生活....。そんな中で反抗を繰り返しながら生きる術を発見してゆくアントワーヌの姿は、むしろ痛々しい。

アントワーヌは典型的な、今で言う「グレた」子供だ。でもどこか飄々として、誰も犯すことのできない彼だけの清潔な領域を保っているのは、彼がすでに文学や音楽に目覚め、それによって自分の目指すべき道をどこかに見ているからだろう。
アントワーヌの家は貧しくて、個々の部屋も持たない生活だけれども、彼は敬愛するバルザックのための祭壇を部屋の隅っこにこしらえた。そここそが彼の居場所なのである。 でも、たとえ崩壊しかかった家族であろうと、そこにやっぱり子供はぬくもりを求める。アントワーヌが車のなかで父と母と楽しそうにしてるシーンは、切ないほど無防備で泣けてくる。

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by kuro_music | 2014-12-18 19:52 | kuroの試写室

- CRACKS- 汚れなき情事(邦題)

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ベルトルッチの<ドリーマーズ> (2003) での鮮烈なデビューから、カジノロワイヤル(2009)まで水もしたたる美しさと独特の個性的な演技で観客を魅了してきたエヴァ グリーン。
エヴァの母親は、ゴダールなどヌーヴェルヴァーグの作品をはじめ、60~70年代フランス映画史を彩る作品群に出演してきた女優、マルレーヌ ジョベールである(最近、彼女は自分についての本を出版し、彼女の娘達 - エヴァには双子の妹がいる - も知ることのなかった自分の子供時代や恋愛、キャリア について書き話題になった)。
さて、今日はもしかすると それほど知られていないエヴァの出演作であり 、彼女の< ノワールな>魅力を堪能できる一本を御紹介しよう。

原題の < cracks > は、< ひび割れ >とか、ぱりっと物に亀裂が走る時の音を表す。(つまりこの作品においては 、女のデリケートなプライドに欲望や嫉妬によって亀裂が生じることを暗示しているのである)。
1930年代の英国。厳格な寄宿学校で、エヴァ演じる女教師 miss G は、その美貌とファッションセンス、機知に富んだ話し方などで女生徒たちの憧れの的である。彼女は事あるごとに(特に水泳の時間などで)生徒達に自己の開放を促すなど、まるて宗教のグルのようにふるまい、絶対的なカリスマをほしいままにしていた。
女生徒のグループの中ではダイという少女がリーダーで、miss G のお気に入りであると同時に 彼女の最も熱心な崇拝者であった。そんなある日、スペインの貴族の血をひく ミステリアスなフィアマという美少女がやって来る。
最初の水泳の時間に、その驚くべき飛び込みの技術で皆をあっと言わせた フィアマは、どこか超然としてい て 、他のおどおどした少女たちと比べれば その特別な魅力は疑う余地などない。そして そんな彼女に、miss G は 完全に魅了されてしまう。そのうえ、祖国から送られてくる夢のようなお菓子や、すばらしい香りのする香水。フィアマは少女たちが手に入れてみたいと思うものを片っ端から持っていた。
年少の少女たちは、たちまちフィアマを慕いはじめるが、完全にお株を取られてしまったリーダーのダイは 激しい嫉妬に苛まれることになる。
そんなある日、miss G の部屋でフィアマは自分あてに父親が世界各国から送った絵葉書の束を見つけてしまう。そのうえ彼女は、miss G が文学作品に描かれた冒険を、まるで自分が体験したかのように女生徒たちに話して聞かせていることを見破る。
必死にフィアマの関心を引こうと努めてきたmiss G を、フィアマは冷たく拒否するようになり
それでもなお、miss G はフィアマの愛と尊敬を手に入れることをあきらめることができない。 こうして少しずつ、missG の世界がゆらぎ始める。 miss G を追いかけるダイと、フィアマを追いかけるmiss G. このトライアングルの行き着く先は?

嫉妬にとりつかれたダイと、欲望に取り憑かれたmissG にとってフィアマという存在は、何が何でも乗り越えなければならない< 目的>、オブセッションになってゆくところがこの映画の面白さである。
miss G が、ありったけの勇気をふりしぼって寄宿学校の外のパン屋へ行くシーンは印象的だ。 ここで、それまでの<格好いい>miss Gのイメージは完全に消えて欠くなり、彼女がすでに自己コントロールを失い、実は 精神的に自立しているどころか、寄宿学校の外へ出ることさえ勇気のいるちいさな女の子でしかなかったことを暴いて見せるシーンだ。
もうあとは、崖を転がる石のように衝撃のラストまで突き進む。女性監督ならではの、鋭く繊細な心理描写、そして英国風ガーリーな味付けも効いている。 もしあなたが、エヴァのファンならば(私はもう、本当にファン!)、ただ単純に 彼女の30年代ファッションの見事な着こなしを見るだけでも楽しめる映画だ。

汚れなき情事 - (監督)Jordan Scott、(出演)Eva Green,Juno Temple /2009年(英)
<DVD>発売済み。
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by kuro_music | 2014-11-26 04:38 | kuroの試写室

サラの鍵

今年の猛暑の東京で、私は一冊の本を夢中になって読んだ。それはタチアナ・ド・ロネの「サラの鍵」という本で、数多いナチスの犯罪の犠牲なった人達の話の中でもとりわけ強く印象に残るものだった。というのも、この本に描かれているのははナチスが発端であるとはいえ フランスの行った犯罪についてだからである。 1942年の夏、ナチスによるユダヤ人一斉検挙がヨーロッパ中で始まった頃 フランスのヴイシー政権はパリでの一斉検挙のためフランス警察を動員した。7月16から17日にかけて9千人の警察と憲兵隊員によって、パリとその郊外で13152件に及ぶユダヤ人の検挙が行われたのである。彼らの多くはパリの15区にあった競技用施設に収容され、7000人のユダヤ人たちはたったひとつの水のみ場の他はトイレもないこの場所で、何の食料も与えられずに他の収容所へ送られるまでの5日間を生き抜かねばならなかった。この事件はフランスでは「la rafle du vel d'hiv](ヴエルデイヴの一斉検挙)として知られている。脱走を試みた者は殺され、多くの人達が自殺をはかった。そこはまさに地獄であったと思う。 この小説はサラという10歳の聡明な少女の目を通して、恐ろしい検挙の朝、『一時的に」と思って大好きな弟を隠し部屋に入れて鍵をかけたままにしたこと、そしてその後に続く苦難の日々を綴っていくと同時に 現在のパリに暮らし、サラ一家と自分の夫の家族との間に運命的なつながりを発見することになるアメリカ人ジャーナリストの話を巧妙に交差させて描かれている。 驚いたことに、私が夏休みを終えてフランスに戻ってきてみると、この小説が映画化されているではないか!! 監督はジル・パク・ブレンナーで、アメリカ人ジャーナリストを演じるのはクリステイン・スコット・トーマスである。早速見に行ってみたが、映画は原作にとても忠実で 実にに素晴らしい出来であった。映画ならではのドラマテイックな演出が効いている。特に、サラが友達と収容所からの脱走に成功する場面は原作でも感動的であったが映画では彼女たちが収容所の鉄線から外に飛び出し、 野原を走り出すシーンが圧巻で、もう少しで無意味に奪い去られるところだった少女たちの生命力の美しさに圧倒され、愛おしさに胸が熱くなるシーンだ。世界中の人達に観て貰いたい。 日本でもぜひ公開してほしい映画である。 まずは、日本でも発売されている原作を読んでみてはいかがだろうか?
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by kuro_music | 2010-10-27 01:12 | kuroの試写室