カテゴリ:パリで今話題の映画( 1 )

Une nouvelle amie 

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直訳すれば、「新しい女友達」というタイトルの、オゾン監督最新作。   
久しぶりに、フランス映画らしい(!)フランス映画を観た気がした。
フランス映画というのは、昔から私にとって特別な「インスピレーションの泉」だった。
思えば、私が少女だったころに、東京の映画館で観たフランス映画はどれも、強く感性と知性に訴えてきて、強烈な印象を残すものが多かった気がする。
たとえばクロード・ミレールの「ちいさな泥棒」(これは、つい最近シネマテーク・フランセーズで再び観て、やはりこころを強く揺さぶられた)とか、エイズで若くして逝ってしまったシリル・コラールの「野生の夜に」とかいった作品のなかに私が見出したのは、自由に生きること、自分らしく生きる権利が誰にでもあるのだということ。そしてたとえそれがどれほどの代償を求めようとも、それらの代償は支払う価値があるのだということだった。

それと同時に、私がフランス映画から大きく影響を受けたのは、やはり「愛」というものの価値観においてだと思う。
愛に関するかぎり、欲望は卑しいものなどではなく自然なもので、世間一般に言われるタブーだって、フランス映画の中ではちゃんとその地位を確立している(さすが、サド侯爵を生んだ国)。
そもそも、なぜタブーなのか? この世には 「個人」があるだけだ。
それが、はたしてタブーかどうかは自分で決めればいい。
そんなふうに、実にさまざまな「愛し方」を教えてくれたのが私にとってのフランス映画だった。(でも、そのフランス映画も最近では やはり時代の波に乗らなければやっていけないのかと思うような作品が多く、以前のような強烈な作家性が失われてきていることは確かだろう)。

フランソワ・オゾンは、そういった意味で徹底してテーマを追求してきた数少ない作家のひとりだ(もうひとり、オゾンと似た意味でアウト・サイダー的な恋愛を執拗に描いてきたクリスチャン・オノレがいる)。
彼らに共通するのは、「タブー」に挑戦すること。偽善的なものや生ぬるいものをとっぱらって、「これが人間なんです」と、いわば挑戦状を突きつけてくる。
だから私たちは毎回、彼らの映画をどきどきしながら観にいくことになる。
この映画においては、ダヴィドが女装した時だけ存在する「ヴィルジニア」という女がその挑戦状だろう。でも、映画の中ではこの虚構の人物であるはずのヴィルジニアは、むしろ、実際のダヴィドよりもずっとたくさんの使命を担っている。だからこのヴィルジニアは虚構なんかじゃない。 この映画が面白いのは、それが「ごく普通に」出会い「ごく普通に」結婚した、どこにでもいるであろう二組のカップルの物語だというところである。だから簡単にレズ、ホモ、などといったボキャブラリーでカテゴライズすることすらできない。
ヴィルジニアは誰の心の中にも存在するのだと私は思う。ただその存在を認めてあげたときに初めて何かが変わる。 ひとりの人間が、誰かの影響を受けて変化してゆくことがどれほど素敵なことかが、この映画を観ていてわかる。
この映画を、誰か大切なひとと観て欲しい。

Une nouvelle amie 監督:Francois Ozon(フランソワ・オゾン)、出演:Romain Duris(ロマン・デュリス)、Anais Demoustier(アナイス・デムスチエ)(2014年11月5日フランス公開)
 

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by kuro_music | 2014-12-04 08:59 | パリで今話題の映画